
説教の年間テーマ=わたしのすべてを知っておられる神
復活節第3主日(C年)の説教=ヨハネ21・1~19
2025年5月4日
新年度がはじまって一カ月が過ぎました。新たに就職された人、入学された人、また、働き場所の異動で動いた人など、その生活環境が大きく変化したのではないでしょうか。同時に気になるのが、通称「五月病」といわれている症状です。特に大型連休明けに、心身の調子を崩す人が少なくないといいます。
五月病は正式な診断名ではありませんが、一般的にそういわれています。新たに始まった日々の働く場所での生活。その環境に適応できずにストレスとして蓄積され、特に5月の連休明けに、心身の調子を崩す人が少なくないというのです。それらを放っておくと、適応障害やうつ病に進行する恐れもあり、なんといっても早期発見と適切な対処が重要になってきます。
もっと具体的に、よく見られる症状として、①意欲の低下や気分の落ち込み②睡眠障害(不眠・過眠)③食欲の変化(減退、過食)④倦怠感や集中力の低下⑤胃痛や頭痛などの身体症状—をあげることができます。(南日本新聞2025年4月30日朝刊/鹿児島大学付属病院福原竜治医師)
福原医師は「真面目で責任感が強く、頑張りすぎてしまう人」に症状の多くは現れると言います。具体的には、完璧主義だったり他人に気を使いすぎたりする人が当てはまります。その予兆は日常の生活の中で小さな形で現れてきます。例えば、楽しかったことが楽しめない、興味が持てない、些細なことで不安感が続いたり涙がでたりする‥等です。
福原医師は、その対処法として次のように提案します。「頑張りすぎないでいい、完璧を目指し過ぎないのも肝心だ」と強調しています。また、大型連休中の生活リズムは、大きく崩さないのがポイントになります。例えば、起床や就寝の時間を大きく変えずに自分にあった複数の解消法を持つことも大切だ、と付け加えます。
わたしたちは毎日新しい朝を迎え、当たり前のように1日を始めます。そして、安心した安全な社会の中で、職場で過ごしています。昨年、わたしたちは、特に被災地のみなさま方には忘れられない出来事に遭遇してしまいました。能登半島地震です。生きている限り、より楽しい充実した日々を期待し努力をしますが、突然の災害によって、一瞬のうちにすべてが崩壊してしまいます。そこから立ち上がるのに時がかかります。物理的にも精神的にもかなりのダメージを受けてしまうからです。しかし、これは当事者にしか分からない気持ちですね。第三者があれこれ言うことではないでしょう。
それでも、現状を打破して立ち上がろうとする思いは誰もがお持ちでしょう。そのエネルギーはどこからくるのでしょうか。お一人お一人異なるかもしれませんがエネルギー源はあるんです。「希望」という明かりにたどり着くための道のり、早く探し当てられますように。

今日の福音書を読んで思います。弟子たちは生前のイエスとの約束を反故にしてしまったのだろうか、と。弟子としての召し出しに承諾の返事をしたのに、元の漁師の仕事に戻ってしまったのだろうか、と。ユダヤ人に対してびくびくはしてなくても、イエスの弟子であることを捨て去ってしまったのか、・・・でもこのことが、確実にイエスの弟子である仕事に戻る大きなエネルギー源を得る出来事になったのでした。
弟子たちはイエスと再度、出会いがありました。復活したイエスとの出会いです。そして、不思議な出来事・大漁を体験するのです。これは最初の召し出しの時を想起させます。(ルカ5章4~6節)今回も弟子たちにおっしゃいます。「イエスは言われた。『舟の右側に網を打ちなさい。そうすればとれるはずだ。』そこで、網を打ってみると、魚があまり多くて、もはや網を引き上げることができなかった。 イエスの愛しておられたあの弟子がペトロに、『主だ』と言った。シモン・ペトロは『主だ』と聞くと、裸同然だったので、上着をまとって湖に飛び込んだ。」これにより、弟子たちの誰もが「主である」ということを知ることになりました。その後、あえて尋ねる者はいませんでした。
さらに、弟子たちは、イエスと善意にみちた真剣な約束をしたのに、イエスをおいて逃げ去った過去があります。特にペトロは三度「否」といってイエスを裏切りました。このことをしっかりと見つめなければならない。そして、赦しを願い、立ち上がるのです。イエスは尋ねます。
「イエスはシモン・ペトロに、『ヨハネの子シモン、この人たち以上にわたしを愛しているか』と言われた。ペトロが、「はい、主よ、わたしがあなたを愛していることは、あなたがご存じです」と言うと、イエスは、「わたしの小羊を飼いなさい」と言われた。・・・三度目にイエスは言われた。「ヨハネの子シモン、わたしを愛しているか。」ペトロは、イエスが三度目も、「わたしを愛しているか」と言われたので、悲しくなった。そして言った。「主よ、あなたは何もかもご存じです。わたしがあなたを愛していることを、あなたはよく知っておられます。」イエスは言われた。「わたしの羊を飼いなさい。」」
これらはみなイエスの言葉を軸にして引き起こされています。弟子たちは、はじめはイエスとわからなかったにもかかわらず素直に従っています。この「素直さ」を持つことが、神の言葉が出来事となるのを見ることが出来るのです、ということを教えています。このように、弟子たちは復活したイエスの愛とやさしさ強さを体験できたのでした。
その後の弟子たちの活動源(エネルギー源)になっているのは、復活されたイエスの愛と力強さを体験したことにあります。わたしたちも同じ体験を、・・。
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