聖霊降臨(A年)の説教=ヨハネ20・19~23
2020年5月31日
新聞で知った「更生保護会協力雇用主」
「更生保護会協力雇用主」という職名は、あまり聞いたことがなく、そのような方とお会いしたこともありませんが、新聞誌上で知りました。(南日本新聞2020年5月25日朝刊)
その方の名は森美佐雄さん(58歳)です。刑期を終えた社会復帰を目指す人に働く場を提供して18年目に入ったということです。
1994年に土木・建設会社「M・M企画」を立ち上げ、家畜舎の新築や改築を中心に請け負う業務を展開されています。現在の従業員6名のうち2人が元受刑者で、アルバイトを含めるとのべ200人以上を採用してきました。長年の功績が認められ、2019年2月には法務大臣から感謝状を受け取っています。「全国13カ所の事業所に選ばれて光栄。人助けやみんなを喜ばせるのが生きがいなのでうれしい」と豪快に笑われます。
元受刑者を自社で雇用し、再起を支える
雇用主を始めたきっかけは、当時雇用主をしていた同級生の一言がきっかけでした。「社会に貢献できることをやろう」と。森さん自身、確かに「受刑者は怖い」という気持ちはあったようですが、元暴力団関係者や麻薬中毒者らと何度も顔を合わせるたびに考えが変わったといいます。仕事のできる、できないに過去は関係ない、・・。「不器用な人ほど信頼できる。入れ墨を彫ったという人の中には上下関係を大切にするタイプも多く、ものすごく働いてくれる」と高く評価されます。「弱者を守るという性分は高校時代と同じ。元受刑者にも真正面から向き合っている」と力を込めます。高校時代は、弱い者いじめをする人を相手にケンカに明け暮れたといいます。
また、「不遇な人に協力したい」という気持ちは年々高まってきているとおっしゃいます。昨年、黎明館であった恐竜展覧会の入場券109枚を児童養護施設へ贈り、子どもたちからお礼の手紙をもらったそうです。「とても楽しくてびっくりすることがありました。あやか」「ありがとう。かいと」。「一生の宝もの」と額縁に入れて飾ってあるそうです。社会貢献への思いは尽きません。
受刑者の再起を支える方々が、確実にいらっしゃるのだなと新たに思い知らされました。頻繁に表舞台に登場する方々ではないようですが、目立たないところで、しかし、しっかりと社会の屋台骨を支えてくださっているのだと感じ入りました。
今日は聖霊降臨の祝日です。みなさんは、どれだけの親しみをこの日の祝日に感じていますか。キリスト降誕・クリスマスのように、わたしたちの五感に訴える、感動的な刺激的な様相は何一つありません。強いて言いますと、「復活ろうそく」が祭壇からなくなるということぐらいでしょうか。
しかし、教会にとっては大変な意味のある重要な祝日なのです。
互いに心の扉をも閉めていた弟子たちが
「週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸に鍵をかけていた」という言葉で、今日の福音書は始まります。フランシスコ会訳によりますと、「・・・自分たちがいた場所のどの戸にも鍵をかけていた」となっています。「どの戸」となっています。原文は「戸」が複数形となっているということです。つまり、弟子たちは自らの心の戸までも閉じてしまっているのです。
また、「みないっしょに集まっていた」弟子たちは、お互いつながりを感じて集まっていたわけではないのです。一人ひとりが、ユダヤ人を恐れて同じ場所に 集まっていただけなのです。それまで、一人ひとりが自らの弱さに気づき、散り散りになって逃げまわっていたのです。イエスを裏切った後ろめたさを抱えながら、集まってきていました。イエスとともに罪の暗闇を背負う力を持ち合わせていないのです。そうした自分たちの現実を見つめてしまっていました。
聖霊を受けて自分の暗闇から解放され…
そのような彼らに対し「あなたがたに平和があるように」と言われます。弟子たちは「主を見て喜んだ」とあります。ここで、みなの弟子たちは、こぞって同じ方向に心が向くようになったのでした。彼らは、その恐れから解放され、喜びに満たされたのです。恐れが喜びに変えられたのです。そしてイエスは、重ねて「平和があるように」と言われ、息を吹きかけます。聖霊です。彼らに新たな役目を与えられます。その使命とともに、それを遂行しうる力をもお与えになったことの証の「息の吹きかけ」でした。
その使命とは「罪のゆるし」です。これはイエスが神から託された使命です。イエスが十字架上でいのちをささげたことによって、わたしたちに現実としてもたらされたゆるしです。したがって、弟子たちによって「ゆるし」が宣言されるたびに、聖霊はその人に宿るのです。こうしてすべての人に聖霊が及び、罪をゆるし合う者の真ん中に、いつもイエスがいらっしゃるのです。そして、教会が誕生しました。
全ての人に働いている聖霊を意識したい
わたしたちのこの世の日常生活の中で、自分を生かしてくれる誰かの存在は大きいです。更生保護会協力雇用主の方のように、・・。目に見える形でそれが実現すると、安心安全を覚えます。特に、社会的にも個人的にも、負い目を感じ、重荷を背負っている人にしてみますと、大きな味方、前に進むエネルギーとなります。
聖霊はわたしたちにひそかに働いています。それだけに、今の自分を意識してみることが大事です。「ゆるす心」を、自分の中に感じることができれば、それは一つのサインと言えます。それを突破口に我が信仰を深め、高めていきましょう。聖霊はわたしたちの日常を支える最大の援護者です。
「聖霊よ、冷えた心をあたため、バラバラになったわたしたちの世界に平和を築き上げてください。アーメン」
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