年間第29主日(B年)の説教=マルコ10・35~45
2018年10月21日
教皇フランシスコのバルト三国訪問記事から
教皇フランシスコは、バルト三国のリトアニア、ラトビア、エストニアを訪問されました。三国に共通する「侵略と迫害の歴史」に触れ、反ユダヤ主義に警鐘を鳴らしたと、報道されています。(カトリック新聞、2018年10月7日)
中でも、おそらく欧州で最も非宗教的と思われるエストニアを訪問されたとき、教皇は多くの人が固く信仰を守っていることに驚いたと語っています。「皆さんの言うとおり、多くの青年たちがわたしたちに聞いてこないことは分かっています。青年たちはわたしたちが彼らの人生について意味のある言葉を持ち合わせていないと考えているからです」。
エストニアでは、教会を疎む青年たちに対し
「青年たちの中には『放っておいてほしい』という人もいます。教会の存在自体が疎ましいか、いらだたしくさえあるからです。そして、本当にそうなのです」と。さらに教皇は続けられます。「さらに手厳しくなると、『もう誰も、教会の言うことを聞きもしないし、信じもしないのが分からないのか』という者もいる」と付け加えられます。それで「性虐待や金融スキャンダルへの毅然として処罰がないのを見ると、青年たちは怒ってしまいます」。
そうであっても、教会は青年たちと向き合って誰をも受け入れ、誠実で、魅力的で、話しやすく、近づきやすく、喜びにあふれる、対話型の共同体になりたいのです、と教皇フランシスコは強調なさいます。
イエスを見出す希望を分かち合うよう励ます
そして、教皇フランシスコはエストニアの青年たちに語りかけました。「わたしたちには証しが欠けているのに、皆さんはわたしたちの共同体のうちにイエスを見出し続けているのです」と。因みに、エストニアの国民の75%が「無宗教者」と自認しているといわれます。この中において、エストニアの若者に、勇気をもって、仲間たちとこの希望を分かち合ってほしいと、教皇は励ましています。
教皇の各国訪問の目的は、カトリック信者に、神に聞くことで力を得るように励ますためです。エストニアのミサで語っています。「皆さんが自由を得たのは、消費主義や個人主義、または権力や支配への渇望の奴隷になってしまうためではなかったはずです」と。第一次世界大戦後のロシアからの独立100年にあたる本年、バルト三国を訪問され、少数派ながらも、信徒の強い信仰生活を讃え、感動し、そして、イエスを見出す希望を、勇気をもって分かち合うように励まされます。
教皇のことばには、温かさと謙虚さを感じる
フランシスコ教皇のことばには温かさと謙虚さを感じます。自らのおごりはまったくなく、相手方への優しさと尊敬とを感じます。「みなの僕になりなさい」(マタイ20章25節)というイエスさまの姿そのものではないんでしょうか。「人の子が来たのも、仕えられるためではなく、仕えるためである」。(同28節)
こうした生き方を推し進めていくためには、いわば、「自ら損をする覚悟」が求められます。自分の利益、権利を放棄していく覚悟です。それによって相手が幸せになり、喜んでいただけるのです。弟子たちとの隔たりはここにありました。今日の福音ではこのことが語られています。
弟子たちは損得、野心でイエスに従っていたが
弟子たちの毎日の生き方を支えている思いは、自らの損得、野心、競争心で、その欲望を満たしていくことに満足感を抱いていたのではないでしょうか。二人の弟子の申し出に対して反応した他の弟子たちの行動が、このことを証明しているような気がします。はたして、現在のわたしたちはどうでしょうか。
一方、イエスさまを支えていた思いは、人間に対する限りない愛でした。日々の疲れにぐったりとしている人へのあわれみの心、やさしい心がイエスさまの行動の源でした。弟子たちとの差がここにありました。これは、今のわたしたちにも言えることではないのかと、・・。
イエスの生き方は、人間に対する限りない愛
イエスさまの思いは、人々を救うためには自らがボロボロになってもかまわないとの決意に満ちていたといえます。だからこそ、ご自分と弟子たちとの「歩み」の違いをはっきりとさせられたのでしょう。十字架への道(受難)とその死は、最後まで弟子たちの納得がいかないまま経過してしまったのでした。イエスさまの思いは、わたしたちの救いが実現する、という実りをもたらして完成したのです。
さあ、新たな一歩を前に進めましょう。弟子たちも、イエスさまの思いを完ぺきにわがものにして進んできたのではありません。進むうちに、徐々に明らかになってきたのです。要は、歩を前に進めることです。教皇フランシスコの励ましもここにあるのではないでしょうか。バルト三国の信徒はそう生きてきたのです。
今の自分の姿にがっかりせず、「希望をもって」、前に進む勇気を願い、祈りつつ今日も生きましょう。
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