
説教の年間テーマ=わたしのすべてを知っておられる神
四旬節第5主日(C年)の説教=ヨハネ8・1~11
2025年4月6日
ある日、一人の無名の青年が、突如民衆の前にその姿を見せ、新しい権威ある教えを人々に語り、その中身を説き始められました。そして言いました。
「『時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい』と言われた。」と。(マルコ1章14~15節)
その青年の名はイエス。その後、イエスは方々を歩き回り、その地で病人を癒し、悪霊に苦しむ人を解放し、回心を呼びかけて、また、ガリラヤへ帰ってこられました。いわゆる、多くの方に認められ、人気を博し、多くの人々や世間の耳目を集め、よい評判をいただいたまま、イエスの故郷・ガリラヤのナザレに帰って来たのでした。人間的に言えば鼻高々ですよね。まさに、故郷に錦を飾ったのです。
因みに、「錦を飾る」の意味は、故郷を離れていた人が出世して華々しく帰る事です。「錦」とは、種々様々な色糸と金糸銀糸で模様を織った豪華な絹織物のことで、「錦を飾る」とは錦で作られた美しい着物を着るという意味になります。ですが、慣用句としての「錦を飾る」は「故郷に錦を飾る」( こきょうににしきをかざる)を省略したものですので、故郷を離れ成功した人が美しい衣服で着飾り、華々しくふるさとに帰る様子を表しているのです、ということです。(study-z.net)
当時のイエスは、一般的に言えば、上述したような雰囲気で故郷に帰ってきたと言っても過言ではないでしょう。当然のごとく皆にほめたたえられます。そして、お育ちになったナザレに行かれます。ここでもイエスは宣教なさいます。安息日にいつもの通り会堂に入り、み言葉を朗読します。
「主の霊がわたしの上におられる。貧しい人に福音を告げ知らせるめに、主がわたしに油を注がれたからである。主がわたしを遣わされたのは、捕らわれている人に解放を、目の見えない人に視力の回復を告げ、圧迫されている人を自由にし、主の恵みの年を告げるためである。」(イザヤ書8章23b~9章Ⅰ節)
聖書の朗読を終えたイエスは、会衆を見渡し言葉を発します。
「イエスは巻物を巻き、係の者に返して席に座られた。会堂にいるすべての人の目がイエスに注がれていた。そこでイエスは、『この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した』と話し始められた。皆はイエスをほめ、その口から出る恵み深い言葉に驚いて言った。『この人はヨセフの子ではないか。』イエスは言われた。「きっと、あなたがたは、『医者よ、自分自身を治せ』ということわざを引いて、『カファルナウムでいろいろなことをしたと聞いたが、郷里のここでもしてくれ』と言うにちがいない。」 そして、言われた。「はっきり言っておく。預言者は、自分の故郷では歓迎されないものだ。」(ルカ4章20~24節)
洗礼者ヨハネが逮捕されたのち、イエスはガリラヤへと退かれます。そして「悔い改めよ。天の国は近づいた」といって、宣教を始めました。
ガリラヤに移り住んだイエスは、「闇の中を歩む者」にとっての「大いなる光」であり、「死の陰の地に住む者」に射し込んだ「光」であるのです。つまり、イエスこそが、人々が熱望していた「大いなる光」であり、神の救いが実現する時が始まっているのです。したがって、イエスは、かつてのパウロのように、律法の規定を守ることを第一とする律法学者やファリサイ派の人々のような考え方ではありません。
今日の福音で、イエスの前に姦通の現行犯で捕まった一人の女性が連れてこられます。イエスを罠にかけようとする律法学者たちの悪意が明らかに見え隠れしています。一方で、その女性を救おうと考えているイエスの思いとの闘いが繰り広げられています。

律法学者たちにとってみれば格好の反論、イエスを陥れるチャンスと見ています。これまで、イエスにひどいことを言われっぱなしだったのです。偽善者、形式主義者、盲目の案内人、白く塗った墓等、これらの言葉は、イエスが彼らに投げつけた糾弾の言葉です。だからこそ、律法学者たちはイエスの失脚の機会をさがしていたのです。
現行犯逮捕の女性を前に、イエスは窮地に追いやられます。イエスはうつむいて地面に何かを書き始めたのち、言葉を語ります。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい・・・」と。
福音の中では誰も石を投げる者がいませんでした。もし投げる者がいたとしたら、イエスは何ということばをおっしゃったでしょうか。このことを黙想するのも有意義なことのように思います。いかがでしょうか。
神はそもそも、人がどんな罪を犯そうとも赦そうとして待っておられます。さらに、人が、もう二度と犯しませんとと決意しても、はかなくその決意は崩れ去っていくこともご存知です。そうでありながら、さらに赦そうと働き続けられます。
人の過ちを赦すことができないとすれば、
神の心に石を投げつけることになりはしませんか?!
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